1980-90年代のアナログからデジタル(例えば紙媒体管理からデジタル管理)への移行では、ICT技術そのものが課題解決という役割を果たしていました。しかしながら、最近話題にのぼる新しい技術(AIやIoTなど)は、顧客の課題解決のための手段に過ぎません。従って、マネタイズが非常に難しいのです。経営者はこのことを理解する必要があります。
 優れた技術であっても、それをマネタイズするには、一部の幸運なケースを除き、下記の①~⑤をすべてクリアする必要があり、戦略が要求されます。これらは必ずしもシリアライズして実施する必要はありませんが、技術の事業化戦略を立案する上で必要不可欠な考慮ポイントとなります。

 

① 技術の確立・商用化 → 商用化に耐えられるか?


  例えばAI技術のケースでは、多くの場合、この技術が顧客課題解決にフィットするかは、やってみないとわかりません。 たとえ、世界初の優れた技術であっても、実社会への適用においては、そのままではすんなり行くことは稀で、試行錯誤を重ねに重ね、あらゆるチューニングを施し、やっと解決に至るかもしれません。しかし、顧客ごとに多大なチューニングの手間をかけていては、非効率で商用化に耐えられません。運用やサポートに手が掛かりすぎるからです。技術を商品化する場合、“手離れが良い”ということが不可欠です。これは、“品質”と並び、「研究・技術開発」と「商品開発」の決定的な差異の一つです。
 

② 顧客価値 → 何に使えるのか?投資対効果は?

  あなたが、顧客との打ち合わせを通し、顧客の課題を理解し、そこに自社の持つ技術が貢献できると判断したとします。そして、POC (Proof of Concept)をやってみて、よしんば、顧客のペインポイント解決にヒットしても、投資対効果が顧客の期待に合わないケースが大多数です。「あ~、できたね」で終わるパターン。さらに悪いことには、顧客は、その技術がうまく課題を解決したと分かれば、もっと安いベンダの類似技術を探し始めるかもしれません。全くの骨折り損です。

 

③ デリバリ → ソリューション化・サービス提供が必要?顧客にどう届ける?

 実は、上記の“POCの山”は、必要なものです。あまりにも”高い山”は困りますが、10や20は序の口です。なぜならば、この”山”を通して、自分たちの技術が本当に何に使えるかが見えてくるからです。そして、これが「顧客価値」にほかなりません。だから、経営者は、この”投資”を許容する覚悟が必要です。そしてその次には、この「顧客価値」を実際にどう顧客に届けるかが課題となります。例えば、この「顧客価値」を多くの顧客に使って頂くには、サービス化が求められるかもしれません。しかも、顧客があなたの技術サービスを自社の運用中のシステムに組み込みたいと考えた場合、あなたはどう対応しますか?「うちは、SI(システムインテグレーション)はできません」と答えると、顧客は「じゃあ、少々高くつくが、類似機能が入ったインテグレーション可能なサービスを大手ベンダから購入しよう」と思うかもしれません。つまり、「あなたの技術」⇔「顧客がやりたいこと」の間を繋げられないと、顧客が離れて仕舞いかねません。こういったケースでは、他社連携やアライアンスが重要となります。


④ ビジネススキーム → お金を儲けられるか?

 “POCの山”を築く前に、ビジネススキームを真剣に考える必要があります。つまり、顧客価値が提供できて、顧客にも投資対効果を認められたとしても、「自分たちのビジネスになるのか」を問う必要があります。技術が顧客課題に多大に貢献できても、自分たちのビジネスにならなければ仕方ありません。売上がワンタイムなのか、リカーリングなのか、成功報酬なのか、ロイヤリティなのかといったビジネススキームの話です。これは、顧客価値の大きさや、顧客課題の解決プロセスのどこにどうやって使われるかなどに依存しますので、その見極めは技術の事業化戦略を考える上で、非常に重要なポイントとなります。

 

⑤ ターゲット市場 → ビジネス拡大できるか?

 その技術のマネタイズで狙っている市場は、正しいでしょうか?例えば、その技術が貢献できる業界の市場は、海外市場が国内市場の20倍の大きさがある場合、特定グローバル市場に狙いを定めるべきかもしれません。グローバル市場への参入壁が高いのであれば、それをどう取り払うかを考えるべきかが優先かもしれないのです。
 

 これらのポイントの検討、判断、実行は容易ではありません。しかし、あなたの技術をマネタイズしたい場合、必ずこれらを考慮した戦略が必要になります。そして、これらの観点は、実は、多くの一般の事業化戦略にも適用できる考え方です。
ナレッジピースでは、これまでの経験、知識をベースにお客様の事業化戦略の立案・実行のご支援を致します。

 

                                   以上

吉澤 尚子.jpg

 エグゼクティブアドバイザー

 吉澤 尚子